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2010年9月24日 (金)

リトマス試験紙の女

わたしが大学生だった頃は「女子大生」という言葉が急にもてはやされた時期で、
まあそれだけ、大学での女子率が低かった。

わたしが通った大学の校舎には女子トイレが少なく、
増え続ける女子生徒のために、敷地内に女子用外トイレが設置されたりもした。

大学周囲の飲食店も、「カツ丼大盛り300円」やら
「コロッケカレー、ライスおかわり自由」やら、体育会系の店がほとんどだった。

少食で遅食なわたしはパンを買って空き教室で食べることが多かった。

それでも女子が増えたということで、街も変わり始めた。
ぽつり、ぽつりと、喫茶店も出来た。
誰かが新しい店を見つけると、「ランチ行こう」と女子同士で連れ立って入った。

その日も新しい店に行こうと、同じゼミの友人とぞろぞろ歩いた。
集団の後方にいたMは、同じく後方にいたわたしにこう言った。

「スパゲティ専門店のスパゲティより、喫茶店のスパゲティのほうが
わたしはおいしく感じるんだけど、どう?」

わたしは答えられなかった。
スパゲティ専門店に入ったことがなかったからだ。

さらにMは言った。

「わたしって、あんまり体にいいもの食べてないんだよね。
それですっかり体が酸性に傾いてると思うんだ」

わたしはうんうんと頷いた。Mがけだるそうだったからだ。

「それでこないだリトマス試験紙を舐めてみたらさ、アルカリ反応示したんだよ!
びっくりした。わたしって、思いのほか健康なんだよね」

びっくりしたのはわたしのほうだ。
リトマス試験紙を舐めてみる発想もなかったし、
それで健康が測れるなんて、思ってもみなかった。

あんまりびっくりしたせいか、Mとの会話はそれしか覚えていない。

それから十年ちょっと経った頃。

わたしは一児の母になり、夫の会社の社宅に入り、専業主婦をしていた。
社宅の友人がわたしに一冊の本を見せた。

「ねえ、あなたの出身大学と同じなんだけど、この作家知ってる?」

その本を見て、あっと驚いた。
Mである。

__2

「面白い本よ」と言う社宅の友人に、
「ゼミ同じだったよ」と誇らしい気持ちで答えた。
Mの活躍がうれしかったし、まぶしかった。

もっといろいろとMの話をしたいのだけど、
リトマス試験紙の会話しか思い出せないのが残念だ。


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