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2010年10月17日 (日)

でっかい哲学ちっさな傷『ネバーエンディング・ストーリー』

ひさしぶりに観ました。
26年前に作られたファンタジー映画です。ああ、うちの冷蔵庫(現役)と同じ歳だ…
観るのは3度目です。

ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』を原作として
当時の特撮技術を精一杯駆使し、映画は世界的に大ヒットしました。

初めて観たときは、ややとっつきにくく、暗いイメージがありました。
観るたびに、つきあいやすくなる映画です。

『ネバーエンディング・ストーリー』

Nebaenndexinngu_

母を亡くしてうつうつと過ごしていた少年、バスチアン。
いじめっ子に追いかけられて駆け込んだ本屋で『はてしない物語』という本に出会います。
本の中のおとぎの国は「虚無」に襲われ壊滅しようとしています。
救ってくれるはずの女王様は病に冒されています。
白馬に乗った少年アトレーユが女王様を治す薬を手に入れる旅に出ます。
虚無から世界を救う旅です。
この本の中の世界はバスチアンの心の世界と連動しています。

この映画は子ども向けに作られていますが、
哲学的示唆が散りばめられており、
大人のほうが感動が大きいかもしれません。

しかし、子どもこそこういった良質で難解なものを見て、
その一端を嗅ぎ取り、肌で感じる事が必要なのでしょう。
ちまたにあふれる「子ども向け=単純、大味」作品、いいの?

この物語に散りばめられたフレーズは普遍的なものとして、
人生の折々に思い出されることでしょう。

虚無に襲われ、世界が消滅する。
悲しみに支配されると、死んでしまう。
自分に世界を救う力があると、自分が気付いていない。

物語の中のいくつかの言葉がきらきらと胸に迫ります。
中でも面白かったのが、このくだり。
世界を救ったバスチアンが「叶えたい願いを言ってみて」と女王様に言われ、
どう答えようか迷っていると、
「希望はひとつじゃなくていいの。たくさんあればあるほどいいの。
夢や希望をたくさん持つほど、しっかりした世界が構築される」
と女王様が言ってくれるのだ。

おお! おおばんぶるまい。

ここ、面白かった。
日本のむかし話「舌きり雀」では大きなつづらを選ぶとしっぺ返しがある。
「花咲か爺さん」でも、欲をかいた隣人にバチが当たる。

欲(希望)はつつましく、ひかえめに。っていうのが日本的思考で、
「大志を持て」が西洋式なんだ。
どっちも真理ではあるけど、どっちを声に出して子どもに求めるかが、
お国柄なんですね。なんか、おかしかったです。

夢は大きく!がわたしは好きだな。

『ネバーエンディング・ストーリー』は哲学のあるしっかりした映画だけど、
いつもラストにはちょっとひっかかる。
バスチアンが叶える願いのひとつとして、「ラッキードラゴンに乗って、いじめっ子をやっつける」
というシーンがあるんだ。
まあ、エピローグみたいなものだから、気にしなければいいんだけど、
「そんなのが夢かい」ってしらけちゃう。

どんな作品にも小さな傷がつきもので、その傷は「自分と合わない部分」なだけで、
作品を批判するには当たらないけど、原作者ミヒャエル・エンデもこのシーンに腹を立て、
削除するよう、裁判も起こしたらしいから、やっぱこれは、まずいラストなんじゃないかな。

シナリオの形として、いじめられっ子がいじめっ子に勝つ、という
様式美をとったのかもしれないけど、これはそんなちっさな話じゃないから。
虚無から希望へ、なんだからね。

哲学を語ったあとに、思わず「なんちゃって」と照れてみせたのかしらん。
その気持ちはわからなくもないけど。

哲学と言えば今日もNHK教育テレビで『ハーバード白熱教室』やります。18時からです。
正義を堂々と語れる場って、すがすがしいです。


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