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2010年10月25日 (月)

まるでホラー『ジーン・ワルツ』

『チーム・バチスタの栄光』『ジェネラル・ルージュの凱旋』で人気沸騰。
医師であり作家である海堂尊の医療ミステリー。三本目の映画化です。

試写を観て、衝撃を受けました。
感動とは別の衝撃です。
紹介しようかどうか迷ったのですが、感じたことを書きます。
ネタバレもあるので映画を観る予定のひとは「続きを読む」をクリックしないでください。
そこまでは、読んでも大丈夫です。

『ジーン・ワルツ』

テーマは代理出産。
菅野美穂が演ずるのは遺伝子の魔術師と呼ばれる産婦人科医、理恵。
彼女が勤務するマリアクリニックには、さまざまな事情の患者が通院しています。
不妊で悩む女性、望まぬ妊娠に迷う女性、胎児の異常を知った女性、
それらエピソードは実際の医療現場をもとにしたと思われ、
命の大切さを問うており、ここは見どころです。涙するシーンもあります。

問題はミステリーの主軸です。

ひとり、50代と思われる妊婦がいます。
あきらかに代理出産です。
今、日本の産婦人科学会で自主規制されている医療行為です。
理恵は「生みたい人に生ませてあげる」という信念のもと、
代理母の高齢出産を遂行します。

以下、ネタバレなので、要注意。

 
 
この代理母と理恵の関係がミステリーの主軸です。
おどろくべきことに、この患者は理恵の母親なのです。
つまり、遺伝子の魔術師・理恵は、自分の卵子と恋人の精子を受精させ、
自分の母の子宮で自分の子を育てているのです。

「生みたい人=実は自分」これがミステリーのオチ。

理恵は過去に子宮摘出手術を受けており、子どもを産めません。
だからと言って、恋人の了解も得ずに精子を用い、
自分の医療技術を駆使して閉経後の母の子宮で胎児を育てる…って
わたしには、許されない傲慢な行為に思えます。
しかも恋人は自分の子と知らずに帝王切開手術を手伝わされます。

理恵は自分の子が欲しいという感情から、
母の子宮と恋人の精子と自分の医療技術を利用します。
それが女の業や不条理として松本清張チックに描かれるのならわかりますが、
なんと、先進医療の新しい方向性として描かれているのです。

そのあたり原作ではどうなっているのかわかりませんが、
映画では彼女の行為が「正義」として描かれているように見える。

理恵は権威と戦うヒーローなんです。「命は奇跡です」と力説し、
「生みたい人に生ませてあげたい。それだけです」ときっぱり言い切っています。

ぞっとしました。
「生みたい人に生ませてあげたい」のは当然のことで、
代理出産に反対している医師たちだって、そう思っていることでしょう。
「手段を選ばない」ことが、問題視されているのです。

理恵は帝王切開で母親のお腹から自分の子どもをとりあげます。
無事手術を終えたあと、事実を知った医師(恋人)から、
訴訟のことばがもれたとき、理恵は言います。

「わたしを裁くのですか? 子どもを裁くのですか?」

生まれた命をタテに、このセリフ。ぞっ。

この映画のパンフレットに、代理出産を推進している実在の医師が
コメントを寄せています。代理出産のプロパガンダ的要素もあるようです。

代理出産は賛否両論あってしかるべきで、
わたしは今のところ「どちらかというと疑問視」という慎重な気持ちでいますが、
良しとする考えも否定できないし、まだ迷いがあります。
しかし、「医師が技術を駆使して自分の子をこっそり手に入れた」という物語で
代理出産を肯定できるのか。これについてはNOです。

孫を生んだ代理母(理恵の実母)は出産後、娘である理恵に
「あなたを生む時よりラクだった」と笑顔で言います。
ラクだったって、言わせていいのでしょうか? 
理恵にとって都合が良すぎませんか。

いつだったかテレビ番組で海堂氏が、臓器移植等の先進医療の進歩に
社会が歯止めをかけてはいけないようなことを述べていました。
「医者というものは目の前の患者を救いたいと思うものなんです」
その言葉自体は、全くその通りだし、心強いし、なんの非もありません。
わたしは医療知識がないし、どこがどうとは説明できないのですが
そのとき少しだけ違和感(危険な空気)を感じたのも事実なんです。

目の前の患者だけ見てていいのか。
生まれてくる命の人権は守られるのか。

科学や医療技術は「できないことを可能にする魔法」なので、
哲学と並走しないと、怖い事も起こると思うんです。

もうひとつ気になったのは最後の展開。
個人病院で、同日に分娩が複数重なり、パニック。
引退していた老院長が急に元気になり分娩を手助けするというエピソード。
これと全く同じ展開の映画がありました。

BABY!BABY!BABY!
観月ありさ主演の妊婦コメディです。
同じ東映映画で、ラストが同じ展開。いいのかなぁ。

片方はコメディで、こちらはホラー。
そう。わたしにはこの映画、ホラーに見えます。

原作読んだ方いらしたら教えてください。女医はヒーロー? ダークヒーロー?
映画は二月公開です。

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