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2010年11月10日 (水)

燃える文たわけ

おととしのことです。ある映画企画に携わっていました。

製作委員会形式です。
テレビ局や映画会社など複数の会社が会議を重ね、企画を立ち上げます。
その企画段階で呼ばれ、わたしはプロット(ストーリー)を担当しました。

原作無しのオリジナルで、1から話を作ります。
プロデューサー複数と打ち合わせを重ね、ひとつのオリジナルストーリーができあがり、
ようやく企画が通りました。
ここまでで半年かかったでしょうか。

テレビ界も映画界も企画は100にひとつと言われています。
企画段階で頓挫することが多いのです。
何ヶ月もかかった企画が一瞬にして消える。そういうの、何度も味わいました。

初めての企画成立。うれしかったです。

さていよいよ製作が始まります。
いよいよシナリオ作りです。
わたしにとり、ここからが本仕事。
だってシナリオライターなんですからね。

 

が。

そううまくはゆかず。

シナリオは別の作家が書き、映画は公開されました。
プロットはシナリオになる段階でベツモノになります。
わたしの名はクレジットされません。
業界にはプロットライターという影の存在がたくさんいます。
かけだしの仕事ですが、そこで終わる人も多いのです。
わたしは検討段階でシナリオを書かせてもらい、原稿料もいただきました。
恵まれたほうでしょう。

ともあれ、その作品には10ヶ月ほど関わってきましたので
最後まで見届けることができなくて、残念な気持ちのほうが強かったです。

映画公開直前のことです。
実家に顔を出すと、親がうれしそうに新聞を見せてくれました。
例の映画の宣伝記事です。
詳しくは説明していませんが、関わったことは伝えてあります。

母「うちのぶんはコピーをとったから、これはあんたにあげるわ」

はーい。一応、ありがたそうな顔をしておきます。

母「コピー見る?」

まさか。コピーなんて見る必要ありません。

でももう母は体脂肪率60%の体を押し入れにつっこんで、
母の「だいじボックス」から折り畳んだコピーをとりだし
わたしの目の前に開いてみせます。

母「あんたの名前を探したけど見つからなかったの」

なんども言ってるじゃないですか。 名前は出ないって。

母「だから、書いちゃった」

え?

驚いてコピーを見ました。
すると一面広告の右下に堂々「原作者 大山淳子」と、
書いてあるじゃーあーりませんか。

一瞬ですが、クレジットされたかと思いました。

巧妙に活字が挿入されています。
父がワープロで打ち出して、はりつけて、
どこかのコンビニの高性能なコピーでとったのでしょう。
その文字はきちんと記事に馴染んで、お見事でした。
この技術をもってすれば、偽札くらい作れそう。

父は「こうしとかんと、わからなくなるからな」とすましています。


顔、こわばりました。 声も出ません。


両親はなーんも事情を知らずにただこうやって遊んでるのか
わたしの心の奥底の思いをくみとって、励ましているのか
そのあたり、わかりません。

ひとり帰る道すがら、お腹のあたりにメラメラと妙な思いがわいてきました。

わたしは文たわけです。 お仕事と遊びの区別がないくらい常に文と遊んでて、
直しにOKが出ると「ええっもう遊べないの」と思ってしまう。
書いてさえいればゴキゲンで、心が解放されるんです。

でも、そのときわいたメラメラはベツモノです。
これだけじゃ終らないぞという「野心」です。
そういうのが自分に沸き起こるなんて……なんだか新鮮でした。

あの紙面を見て、気付いたんです。
わたしは悔しかったんだ。
だって書きたかった。シナリオを自分で。
それを「お仕事たのしい」という言葉で誤摩化していました。
ふたをしていた自分の感情を見せられた思いです。

わたしはこの日初めて「世に出たい」と思いました。
縁の下の力持ちではなく、歯車でもなく、世に出たいと。

わたしの作品を世に出そう。
わたしの名前で世に出そう。

そう決心しました。去年の暮れのことです。
不遜ですか? はいたしかに。

それから創作努力の方向性を変えました。
まだなんにも成果は出ていません。
正直くたびれました。
でもあの日親に見せられた紙面が忘れられません。
悔しさと希望。両方を一度に自覚した日でした。

自分を信じてがんばるしかないです。
がんばったまま終わっても、後悔しません。
最後の最後まで自分に賭けてみようと思います。

人生後半メラメラするとは、子どもの頃は想像もしませんでした。
メラメラ期って、ひとにより、長さも時期も違うんでしょうね。


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コメント

「だから、書いちゃった」
「こうしとかんと、わからなくなるからな」]

ご両親、もう最高です!!! さすがJUNKO様のご両親!
メラメラと火をつけてくれたのですから、感情のふたを開けたのも良かったのではないですか?
ふたを開けたことによって酸素が供給されたから、不完全燃焼が改善したのかも。

蔦谷Kさま
ええ、もう、客観的に見て、上記ふたつのセリフは秀逸というか、
わたしには思いつかない名(迷)ゼリフでした。
考えてるからなのか、ゼロ思考だからできるのか…昭和ヒトケタの行動おそるべしです。
あっけにとられる。を体験しましたよ。

そうですね、ふたがあき、酸素が供給され、メラメラ…
たしかにそうです。火加減に気を付け、持続させます。

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