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2010年12月19日 (日)

ひとりごととモノローグとやかん

朝起きて(日曜の朝は時間的には昼です)、
珈琲係の夫がお湯をわかしているそばで、

あれこれ話をしました。
結構、しゃべりました。
おきぬけのノドが痛むほど、しゃべったんです。

夫はやかんを見つめたまま、返事をしません。
夫は眼鏡をかけています。
やかんって眼鏡をかけて見つめるほどのものでしょうか?
コカコーラの瓶なら、なにやら妄想も含めて見つめるのもわかるのですが、
たかがやかんじゃありませんか。
返事ができないほど見つめる必要をわたしは感じません。

「ねえ、聞いてるの?」夫の背中をトン、と叩いて尋ねました。

夫は目を合わせません。合わせないまま、ぽつりと言いました。

「ひとりごと言ってると思ってた」

「!」

わたし、ひとりごと、言ってるんですか?
朝からのどが痛くなるほどに?

 
ドラマでよくあるのが、ひとりごとです。
ドラマの登場人物って、信じられないくらい、ひとりごとしゃべります。
ひとりごとは便利なんです。脚本家にとって。
モノローグ(心の声)ってやつも、便利です。

登場人物がひとりでいる時の心情やプロフィールを
ひとりごとやモノローグでぺんらぺんらしゃべらせてしまえば、

楽ちんです。

創り手の手抜きとして、稚拙な手法とされています。
ドラマを見ていて「安易に使ってる」と感じること、多々あります。
でも、逆手にとって、効果的に使うのも、アリなんです。

わたしが創ったラジオドラマ『モモと見た夢』は、
モノローグを多用した上、モノローグがすべて虚構だったという、
ラストにどんでん返しがあるミステリーです。
どんでん返しがテーマではないので、途中で「気付く人は気付く」あんばいに
さじ加減しています。

ラジオドラマは映像と違ってある程度モノローグは許されますが、
「なるべく会話で進む」のが、テクニックとして「上」と見なされます。
なのに『モモと見た夢』はそのほとんどがモノローグという
稚拙中の稚拙の手法を用い、しかもそれが嘘という、新たな試みです。
思いついたアイデアが、どれくらい通用するか、試してみたかったんですよ。

コンクールだったもので、「選考会で意見が割れて喧嘩になりそうだった」と
受賞のお知らせの電話で言われました。
結局一等賞になれず、佳作となり、でも、オンエアされました。
あんな無謀な試みの作品を採用していただいて、感謝感謝です。

できあがったドラマを聴いて、試みは成功したと思いました。
スタッフや俳優の方々に高い技術と熱いハートがあって、
シナリオの穴を埋めてくださったんだと思います。

ものづくりって、過去のノウハウのお勉強も大事ですが、
既成の概念にとらわれず、自分でやり方を考え出すことが日々必要だと
わたしは思っているんです。

が。

会話してるつもりが、相手にひとりごとと思われていた。
という事実は、いかがなものでしょう?
やかんを前にした夫婦の話に戻ります。

ひとりよがりで一方的な話し方。

もしくは、

聞く方に愛が無い。

どっちも不幸です。
ちなみにやかんを見つめていただけあって、珈琲はおいしかったです。
だから、ま、いっか。

心の糸』再放送は本日午後4時45分から。


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コメント

すごいですね!お喋りが独り言に?我が家には無い話だが、何故独り言だと思ったかだが、経験上だと思うが?淳子さんには?思い当たる事無いですか?きっと真剣に聞いて返事しようとしたが、ジ、エンドなんて事旦那さんの経験上多いんじゃ無いのかな?それか?旦那さんは多くの作業苦手で、お湯沸しに集中するタイプの複数作業苦手かどちらでしょう?

michiさん
言われてみると心当たりありました…。
おっしゃる通り、返事なんか聞いちゃおらず、勝手にエンドにするばかりか
どんどん別の話にうつり……
ああ、たしかに夫は経験上、ひとりごとと思ったのかもしれません。

さきほど夫に聞いたら「わかってらっしゃる」と言ってました。

あ~、ドキドキした……。
今日のブログ、上質のサスペンスドラマを観ているようでした。すいません、ドラマじゃないですよね。
ラストの、『ちなみにやかんを~』の1行、背筋凍りました。

とこれで背景変わりましたよね。文章はそのままで背景だけ総とっかえみたいな。
こんなこと出来るんですね。今回のもとてもいいです。タイプライターの横のグラスに入っているのは
何でしょう?
赤ワイン?

―男は、数日前から急に無口になった妻に、尋常でない不安を覚えていた。
でもそれは、‘執筆がはかどっているからだ’と、自分に言い聞かせた。
実際、今日、穏やかな日曜の昼下がり、妻の仕事部屋から間断なく聞こえてくる
タイプライターの音…… (中略)

妻が買い物に出かけた。
男は、普段はそんな事しないのだが、なんとなく妻の書きかけの原稿を見てしまう。
そこに書かれていたのは……

やかんを見つめたまま返事をしないダンナはダメになる
やかんを見つめたまま返事をしないダンナはダメになる
やかんを見つめたまま返事をしないダンナはダメになる

ごめんなさーい。
今日のブログ読んでいろいろ想像してしまって書かずにおれませんでした。
『シャイニング』のパクリです。

御主人、頑張ってください! 

ヒロユキさま
ブログの背景デザイン、替えられるんですよ。いくつもあって、選べるんです。
季節感が出せるものを選んでいるのですが、前回はもみじを選び、
うっかり秋のまま年末まで来てしまい、あわてて替えました。
これ、アメリカ製のデザインです。赤ワインだと良いのですが、生き血だったりして? 

夫の、生き血。…背筋凍ってください。

やかんを見つめたまま返事をしないダメなダンナの生き血を飲む女作家
やかんを見つめたまま返事をしないダメなダンナの生き血を飲む女作家

ごめんなさーい。
ヒロユキサスペンスのパクリです。ダブルパクリ。
『シャイニング』好きです! 怖いだけじゃなくて、美しいから好きです!

そうそう、『シャイニング』って美しいですよね。
応募ハガキが当たって、人生初の試写会で観ました。その前に小説を先に読んでいて
映像をあれこれ想像していたんです。
『エクソシスト』や『ヘルハウス』や『オーメン』のような陰影の多い不気味なものを
想像していたんですが、観てびっくり、衝撃を受けました。(その頃よく衝撃を受けてました)
ホテルの内部はセットなんですよね。キューブリック凄いです。
小説も映画もとても思い入れ深い作品です。

ヒロユキさま
人生初の試写会! それは記憶に残りますね。『シャイニング』でよかったですね。
わたしは『催眠』でした。人生初の試写。人にもらった券で見ました。稲垣吾郎ちゃん出てました。

『シャイニング』はあのホテル、すごいですよね。
思い出すと体がふわ〜っとします。
説明的ではない話の進み方もすごいです。
最近はあっちもこっちもCG映像が凄くて、衝撃を感じなくなってしまいました。

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