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2011年1月18日 (火)

日本映画の底力 『太陽を盗んだ男』

 
某通信社の依頼で、名作シネマを紹介する短い記事を書いています。
そのため、常に古い映画を探して、ちょこちょこ見ていますが、
今まで紹介したのはほとんどアメリカ映画で、イタリア、イギリス映画もちらほらあるけど、
残念ながら邦画は一作もとり上げていないのです。
見てはいるのですが、紹介できない。

1980年以前に作られた映画という条件があるので、だったら
黒澤明、小津安二郎、市川崑、などなど名匠がぞろりいらっしゃる。
のにのに、
熱い思いで「この映画のここが好き!」とこぶしを握るほど感情移入できないのです。
時代の距離感、感じてしまうのです。
骨董品を眺めるような気持ちになってしまい、感情移入できません。

アメリカ映画だと、たとえば『ペーパームーン』
これ、ちっとも古くないし、まあたしかに古いんだけど、古くさくない。
今のわたしの感覚で、距離無く楽しめます。

小さな記事だから「いわゆる常識としての名作」を紹介すべきなのでしょうが、
自分が「コレダ」と思えないと、どうも書く気になれません。

けど、やっと見つけました。
日本映画のとっておき、怪作です。

『太陽を盗んだ男』1979年

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沢田研二主演です。
ジュリーと呼ばれた元祖アイドルで、わたしが子どもの頃、よく歌番組で見かけました。
退廃的な表情、流し目、突拍子も無い衣装、ややワルっぽい匂い。
当時正当派の子どもだったわたしには理解できない存在でした。
正統派の子どもというのは、背伸びをしないんです。
今、わたしは健康診断で背伸びをして1センチ誤摩化しているけど、
子ども時代は正々堂々、そのまんまで生きていました。
最近、懐かしの映像で「歌う沢田研二」を見ましたが、歌、すごくうまいんですね。
すばらしいパフォーマンスです。

わたしにとりあくまでも「歌手」のカテゴリにあった人ですが、
この映画での演技はすごいです。

チューインガムというあだ名の中学の理科の教師が、
小さなアパートでひそかに原爆を作っています。ええ、原子爆弾です。
努力をおしみなく注ぎ、原爆作りに励むのですが、その前半の面白さったら、たまりません。
まさに映画だ! これぞ映画だ! 創意工夫に満ちています。

この教師(ジュリー)が何を考え、何の目的でそうするのか。
ここがミステリーで、魅力なのですが、なんとまあ、
目的は「作ること」で、その先がありません。

ありませんので、作ってから、目的を考えるのです。
ここから後半戦に入ります。
ここからはもう、ぞっとします。
現代社会に、こういった人間がそこここに潜んでいる。そう思えるのです。
この映画は古くありません。まさに「今」を言い当てています。

原爆をおもちゃのように扱うシーンが出てくるし、天皇問題などのきわどいモチーフも満載で、
大作から外れた、ややカルトちっくな問題映画だったようですが、
キャラクター設定も構成もセリフも演出も骨太でかっちりと、
高い水準で作られた映画に相違なく、時を経てどんどん評価が上がっているようです。

カーアクションもすごいです。
いつもは興味がもてない分野ですが、この映画のはすごいです。
こんなにハラハラする映画、珍しいです。
人が数人死んじゃってるんじゃないか、マジに。と思うようなド迫力です。

刑事役の菅原文太、かっこいいです。
おまわりさんの水谷豊、借金取り立て屋の西田敏行、みんな若い!

長谷川和彦監督。自身、体内被爆者だそうです。
この映画はやはり、監督のパワーとセンスで化けたのでしょう。
大化けです。
必見です。


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シネマdeぶんぶん」カテゴリの記事

コメント

日本の昔の名作、ほとんど見てません。
原爆作りに励むジュリーですか・・・。
タイトルは目にしたことありましたが、そんなぶっとんだ設定の映画だったとは!
わくわくします!絶対見ます!

本当は見てからコメントしようと思ってたのですが、
このところハリウッドのオーソドックスなものを勉強のため見直しています。
構成や企画など、基本が身についていないと痛感して、
基本に戻ってます。

JUNKOさんには内外の名作、これからもどんどんご紹介いただきたいです。

わたしが最近見た日本の古い名作は、
成瀬監督の『浮雲』です。(高峰秀子さん追悼というわけではないんですが)
ご存知の方々には「何を今更」だと思いますが、すごい名作でした!
時代は戦後の混乱期で、そんなに奇抜な設定も唐突な展開もないのに、
途中全く緊張感がとぎれず、とにかく男女の情愛をつきつめています。
恥ずかしながら林 芙美子さんの原作も読んでないのですが、
水木洋子さんのシナリオ、すばらしい!
主人公たちの存在感が違います。
もはやフィクションとは思えません。
スクリーンの中に生きているように見えます。

こころんさん
このジュリーの映画はきっとこころんさんもハマると思います。
勉強に疲れて、すかっとしたい時に、遊びで見るといいかもしれません。
前半が特に好きなのですが、後半は「こんな予算どこにあったんだ」と。
昔の映画は逆に贅沢と言うか、創り手が破産覚悟で作ったとしか思えません。

ハリウッドのオーソドックスものは確かに勉強になりますね。
手抜きが感じられません。
やっぱアイデアに敬意を払い、お金を払う国です。

成瀬監督の作品は未見です。
近所のTSUTAYAに成瀬さんのコーナーがあるので、こんど借りてみます。
文藝ものが多いですよね。
水木洋子さんは伝説の脚本家ですよね。
テレビは向田さんで、映画は水木さん。
晩年病気になられて、映画人達がそうとう残念がっていたという話を
聞いた覚えがあります。

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