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2011年1月10日 (月)

なげきの時間

 
近所のスーパーでのことです。
レジに並びました。そのレジがすいていたんです。並んでいる人がいないんです。

あらまあ、会計中のお客さんの子どもが泣いています。
7歳くらいの男の子でしょうか、爆発的に泣いています。
保護者はその子のおばあさんらしいです。
男の子はおばあさんにしがみつき、反り返って、天井に顔を向けて
うぎゃー!!っと泣いています。滝のような涙です。
なるほどそのせいでレジが滞り、並ぶ人がいなかったんです。
うかつでした。

尋常じゃない泣き方です。
好きなお菓子を買ってもらえない、そんな甘い方向ではないようです。
叫びの合間に聞こえる言語を聴き取ると、「2番じゃなきゃだめだー」と叫んでいます。
少し考えて、わかりました。
2番のレジで会計したかったようです。
彼にとって「2」がラッキナンバーなのでしょうか。

 
ここは7番です。
ラッキーセブンと言う言葉を知らないのでしょうか。
ひょっとして色気づいた? 美人が好きですか?
2番レジを見ました。そういうことではないようです。
7番レジのお姉さんを見ました。
すらりとしたスタイル、小さな顔、ショートカット、つぶらな瞳。
なんとこのレジのお姉さん、超美人じゃないですか!
なのに男の子は「7番じゃやだー」と号泣です。

色気づく前の男ってなんて馬鹿なんでしょう。
こんな美人の前で醜態です。
まあ、色気づいた男はもっと馬鹿なんですけどね。

男の子は一向に泣き止みません。
せめてもの救いは、次の客がわたしということです。
わたしでよかったです。
わたしはこういうことでイラつきません。
なぜならヒマジンだからです。

わたしにも仕事があり、急ぎの時は食べる時間も惜しく、寝る時間も削ります。
友人との約束をドタキャンし、病院の予約もキャンセルし、胃薬飲んで書いてます。
それでもわたしはゆっくり歩きますし、電車で化粧はしませんし、
歩きながらものを食べたりもしません。
最近は駅の改札をパンを食べながら通る人もいます。
お箸でサラダを食べながら電車に乗って来た人も目撃しました。
きっとほかの多くの人は、わたしよりずっと忙しいのです。
相対的にわたしは自分をヒマジンだと思っています。
ヒマジンなので、レジで待たされることにイラついたりせず、
むしろちょうじりがあった、くらいに思っています。
ほかの忙しい人たちとのちょうじりです。

わたしは泣きじゃくる男の子を興味深く見ていました。
男の子は世の中の不幸を一身に背負ったような心持ちなのでしょう、
あとには引けないイキオイで泣き叫びます。
解決の道はあるのでしょうか。
すると、レジを済ませた客の中からひとり、女の人がツカツカ歩いて来て、

バコン!

思いっきり男の子の頭をはたきました。
すごい音がしました。
ゲンコツじゃなくて、平手ですが、頭上から思い切り叩き付けた形です。

びっくりしました。
男の子の頭が割れたかと思いました。
わたしとレジのお姉さんは同時にカタマリました。

「泣くんじゃない!」と女の人は言いました。
するとおばあさんは「叩くんじゃない!」と叱りました。
どうやら叩いたのは男の子のおかあさんで、先にレジを済ませて待っていたようです。
おかあさんは男の子より小さな子を連れています。妹のようです。
三世代で買い物に来ていたんですね。

バコン後、男の子はかたまってしまいました。
そしてしおしおと、レジを離れました。

わたしとレジのお姉さんはおんなじ気持ちだったと思います。
目を見合わせて、笑顔でうなずきあいました。
おなじ気持ちというのは、男の子が心配だったんです。

頭がどうとかじゃなくて、精神です。
彼は2番レジが良かったのに7番になってしまった。
それだけであんなに不幸を感じて泣き叫んでいたのに、
さらなる不幸があったことに気付かされたのです。

公衆の面前でどつかれる。という不幸です。

レジのお姉さんはその男の子のほうをちらちら見ながらわたしの会計をし、
ていねいに商品を袋詰めしてくれました。
言葉は交わしませんが、その時の気持ちを共有したかったのだと思います。
「だいじょうぶかしらん」という思いです。

だいじょうぶです。きっと男の子の未来は明るいです。
こんど何かでつまずいた時、なげくのは短時間で切り上げ、
前へ進むのではないでしょうか。

不幸を最小限にくいとめるコツです。
なげきはさらなる不幸を呼ぶ。さっさと前へ進め。これです。

でも、このコツってあんまり身に付いてしまうのも考えものですね。
以前のわたしは「今日いっぱいはマジへこたれよう」って、期限を切ってなげいていましたが、
最近では「あ、そーゆーこと」と瞬時に流してしまいます。

なげきに割く時間、秒単位になってます。

なげきって、まずい料理みたいなもので、味わったって腹立たしいだけで
そんなもん食うくらいなら、空腹のほうがマシ、ってもんです。

すっかりふてぶてしいおばさんになっちゃいました。
たまには号泣すっかな〜。あの子みたいに。
実はうらやましかったのです。号泣できるって、いいなぁ。

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ぶんぶん的日常」カテゴリの記事

コメント

今時?大泣きする子供なんて見た事無いな?それに子供を叩く親も見た事無いな〜ラッキーが来たのかも?
羨ましいね〜それを冷静に見ていられる観察力!大物です!
私ならレジをすぐにスル〜しますが〜ところでレジを打つ人って,当たり外れあると思いませんか?
私の田舎にも大きめのス-パ-があり買い物をするのだが〜必ず混んでてもレジに人が居ないところがあるんだよね
それで〜そこに並ぶとなんか?レジを打つのが異常に遅い人の所だと気がつく,それで後悔して〜今度は違う所で
並ばなければと思うのだが?引き寄せられるというか〜またこのおばちゃんか?なんで毎回当たるかというか学習能力に欠けているんだろうな〜私の後ろに並ぶのは確率的に男性が多い〜買い物あまりしないような男性ばかりが,おばちゃんに捕まり〜レジが明らかに遅い事で袋詰めのときには大人数で並んで居た主婦達に負けている!
主婦は分かっているんだろうね〜あのおばちゃんは,要注意だという事を!急がば回れかな?

michiさま
レジで遅いのってやはり嫌われるんですね。
わたしは自分がレジやったら確実に遅いだろうという予想から
むしろ親近感を感じて、そう嫌ではありません。
でも最近レジ遅い人、いないんですよ。
うちの近所のレジ、みな早いです。
マシンが発達したせいかもしれません。
商品をピッと当てるだけ、お金もマシンが数えます。

泣く子はよく見ますよ。このあたり、泣きやすい環境なのでしょうか。
叩くおかあさんも結構います。
自転車に乗ってた子が自動車にぶつかって転んだとき、
おかあさんが走って来て、子どもをどつきました。
「飛び出したあんたが悪い!」と。
目撃したわたしはあわてておかあさんを止めて、病院へ行くよう勧めました。

バコン!
「泣くんじゃない!」

ああ、母でなく赤の他人だったらもっと痛快だったのに!
っていうか、当方がその場にいたら、バコン、はさすがに控えますが、「泣くんじゃない!」を言わずに我慢するのは難しかったかも。

>なげきって、まずい料理みたいなもので、味わったって腹立たしいだけで
>そんなもん食うくらいなら、空腹のほうがマシ、ってもんです。

それは「ふてぶてしいおばさん」なのではなく、健全な感覚ですよ。
なげきって、ときにそれを甘美に味わい、中毒になってるような人もいますからね。

蔦谷Kさま
健全? うれしい。目の前がぱあっと開けました。
そうか。なげき中毒者ってたしかにいる気がする。
昔の文学者にも多いかもしれない。なげくのも芸の域かも。

わたしは苦手です。
子どもの頃、泣き叫んでだだをこねた記憶がありません。
泣く子を見て「じゆ〜だなぁ」って思ってました。
なんかこう、恥ずかしくって。

ふふふ。そう、恥ずかしくない人は、何でもできるんですよ。
神と金が紙一重の国のドロボーまがいも、そういうことではないかと~

蔦谷Kさま
にゃるほど!
恥の意識こそ行動の抑制力!ですよね。
わたし、恥ずかしがりやなのかなぁ。だからこんなにびんぼーなのか。

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