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2011年1月 8日 (土)

姑と師匠と、『武士の家計簿』

 
わたしにとり映画って、ひとりで見るのが自然なのですが、
唯一、こちらから誘って、たびたび一緒に見る人がいます。

夫の母、つまり姑です。映画好きなんです。

そもそもわたしがシナリオを始めた遠因になったのも姑です。
今の夫と結婚した時、わたしはパートをしていたのですが、会うたびに姑はこう言うんです。

「じゅんちゃん、好きなことやってる?」

好きなことってなんでしょう?

子どもは小学生。育てるのに必死です。
働いて、食べさせて、学びたいだけ学ばせる。
シングルマザーだったわたしにとって、それが大命題でした。
再婚したと言っても、安心できません。
やはりしっかりこちらも働いて、自分で子育てを全うしなければと思っていました。
肩に力が入ってガチガチでした。

姑はそんなわたしに会うたびに「好きなこと、やってる?」と問い続けます。
やがてわたしはパートをやめフリーライターとなり、
子どもの頃から好きだった「書く」ことで、少しずつお金をもらえるようになりました。

書いた記事を見せると、姑は必ず熱心に読んでくれます。
そして言います。
「これがじゅんちゃんがやりたかったことね?」

わたしはその問いに「はい」とは言えませんでした。
取材して記事を書く事が、やりたいことではありません。
近づいたけど、これじゃない、と思います。
そんなわたしに姑は言います。

「あの子(息子)ね、じゅんちゃんと結婚するって報告に来たとき、こう言ったの。
 好きなことをやらせてあげたいんだ、って。
 だからあなたには好きなことをしてほしいの。それがあの子の夢だから」

あっ、と思いました。
うれしいというより、つきつけられたような思いです。

わたしは子どもを産んだ時に、自分は裏方になったのだと思いました。
裏方にまわって、支える人生に変わったのだと思いました。
そして子どもに夢を託しました。
「あなた女の子だけど、何か自分の好きなことを見つけて、大人になってもその夢を追いかけてね」

自分は支える側で、いいのです。
おかあさんってそういうものだし、大人は自分の人生を削って子どもを応援するものだと
思っていました。
その後、離婚もありました。
自分の人生など頭から消えてしまいました。

でも現実にはこうして、子育てを一緒にしてくれる男性と出会いました。
そして「好きなことをしていいよ」と言ってくれているんです。
自分の夢にむきあうことをとっくに諦めていたわたしに、
「まだ間に合う。逃げるな」と言ってます。

それからすぐにシナリオを学び始めました。
夢を追うには遅すぎる歳でしたので、できるかどうかは未知数でしたが、とにかく始めてみました。

姑の言葉がわたしの背中を押し、ひたすらがんばりました。
好きなことではがんばれるんですね。よくがんばったと思います。
仕事も家事もしながら、夜は学校へ通い、深夜に作品を書き続けました。
がむしゃらでした。
2年ほどで賞をとり始め、シナリオが雑誌に載り、ラジオドラマがオンエアされ、
ささやかながら業界で仕事を得ることができました。

姑はわたしのラジオドラマを何度もくり返し聞いているそうです。
そして「好きなことやってる?」を言わなくなりました。

 
そんな姑と、ときどき映画を観るのがわたしの楽しみでもあるんです。

去年公開した映画『武士の家計簿』を姑と見る約束をしていたのです。
が、先月姑が怪我をして、今、自宅療養中です。しばらく観に行けそうにないということで、
しかたなく、
しかたなく、
しかたなく、
今年に入って、夫と観に行きました。

この映画はわたしが通っていたシナリオスクールの先生が脚本を担当しています。
柏田道夫先生です。

わたしの定形外無鉄砲シナリオをいつも優しく受け止めて導いてくださった恩師です。
ゼミ形式で、学ぶのがほんとに楽しかったです。
振り返ると、セイシュンでした。
大好きな先生の作品を大好きな姑と並んで観たかったのですが、
良い映画は誰と見ても良い映画に変わりはありません。
面白かったです。充実感ありました。
こんな時代劇、ちょっと無いです。

血を見ない時代劇です。必見です。
特に今の政治家たち、必見です。
劇場にくすくす笑いがさざめいていました。教え子として誇らしかったです。

姑の体が治ったら、また見たいです。
ロングラン、期待しています。


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