« いぬのなまえ | トップページ | モチベーションのもんだい »

2011年1月26日 (水)

マヨネーズのおじさん

 
伊丹十三初監督作品『お葬式』を見ました。

4988102033231_1l

この映画の存在は知っていましたが、しっかり見たのは初めてです。
伊丹さんの存在はうっすらとした記憶のむこうにあります。

伊丹さん全盛期、わたしはまだ物心がついておらず、
「時をかけぬけた有名なひと」というぼんやりしたイメージしかありません。

そう、マヨネーズの新しい食べ方を教えてくれたおじさん。
そんなイメージです。たしか味の素マヨネーズのCMやってましたよね。
最近は動画でも見られますが、やっぱちょっと、突出しています。

わたしが物心がついたのは四十を過ぎて、シナリオを学んでからです。
それまでは、情報に対して受け身だったし、
自我はありましたが、表に出す事をしませんでした。

自我は、表に出そうと思った時に、大きく成長するし、情報も入ってくるのです。

昔の缶ジュースは、穴を2カ所開けて飲みました。
中の液体を出そうとすると、空気が入ってきます。
わたしと社会の関係も、そういうことで、成り立っています。

 
わたしがシナリオに首を突っ込んだ時に、すでに伊丹さんは亡くなっていました。
日本映画を語る上で見逃してはならない人なのに、なんとなく避けていました。
ちょっと怖かったのかもしれません。

『お葬式』が話題になった頃、おそらくテレビでも放送されたと思いますが、
1シーンだけ、覚えているんです。全部は見てないので、予告映像かもしれませんが、
過激な性描写で、当時のわたしは乙女だったもので、吐き気がしました。
前後を見ておらず、そこだけ、たまたま、目にしたので、なおさらだったのでしょう。
そのシーンだけで、伊丹さんの全作品から目を背けていたのかもしれません。

今、物心つき、かつ、乙女も小じわの奥に引っ込んだわたしが見ると、
この作品は映画の面白さがぎゅっと詰まった、それでいて特異な作品で、すごいんです。
日本アカデミー賞をとりましたが、世界でも負けない作品です。

過激な性描写も、なくてはならないモチーフです。

亡くなったのはじいさんです。
生きている間は少々色好みだったじいさんも、
死ぬと善人として語られ、青白い顔、静かです。

死は、静かです。

静かな場所に乱入した喪主の愛人は、下品に高笑いし、叫びます。
声の高さも大きさも、うるさすぎます。耳障りです。
さらに愛人は喪主をせっつき、なんと野外で関係を持ちます。
醜く太った体のラインをしっかりとカメラはとらえます。

うるさく、下品で、醜い。
一方、死は静かで清潔です。

この対比が見事です。
ほんとうにうるさいんですよ。音量を調節しながら見ましたが、
劇場ではそうもいきません。
うっとうしさに耐える。それが生きる事と言いたかったのではないか。
そんなふうに思えます。

マヨネーズおじさんから、映画おじさんに印象が変わりました。
これからゆっくりひとつひとつ、伊丹映画を味わってみようと思います。

それにしても昔は頑固な天才がいたなぁ。
今は頑固だと活躍の場を奪われる傾向にあるかも。
みんな戦うのがめんどくさくなっちゃって、まる〜くてゆる〜い人が、生き残る。
国民総柔軟化。
だから世界に乗り遅れるのかも、科学とか。

伊丹映画ならこれだぜ!がありましたら教えてください。


応援クリックよろしくお願いします。人気ブログランキングへ
 
 

レンタル情報はこちらで TSUTAYA online

« いぬのなまえ | トップページ | モチベーションのもんだい »

シネマdeぶんぶん」カテゴリの記事

コメント

どれもわりと好きです、当方は。『あげまん』、『マルサの女』、宮本信子がいいですね~
特に、JUNKOさんには、『タンポポ』の中で、宮本信子が言う「梯子」のエピソードをお聞かせしたいです。

あと、『タンポポ』はシークエンスのつなぎ方が、当方もう大好きです。モンティパイソンのそれをホーフツしました。

蔦谷Kさま
おお!それではまず、『タンポポ』から行ってみます。
そのエピソード楽しみです!
どれも見事にスルーしちゃってます。しばらく伊丹さんで楽しめそう。

勝手な想像ですが、蔦谷Kさんは「伊丹十三を好む」というか、
「伊丹十三を楽しむ」人と言う気がしてました。
生まれ落ちる前から物心ついていた。そんな印象です。伊丹さんではなく蔦谷さんがです。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/562780/50692108

この記事へのトラックバック一覧です: マヨネーズのおじさん:

« いぬのなまえ | トップページ | モチベーションのもんだい »