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2011年2月12日 (土)

沈んだ太陽

 
東京も雪が降っています。太陽が見えません。

昨夜、地上波で長い映画を見ました。
細長い映像じゃなくて、時間が長い映画です。
原作を読んでないので、映画化でどこがどう変わったのかわかりませんが
映画を観た感想は、ドウシテコンナ構成ニシチャッタノ?

大疑問の『沈まぬ太陽』

シーンは、ある年齢以上の人ならみなが知っている飛行機事故で始まります。
御巣鷹山の惨状が(ひかえめに)映し出されます。
映画が始まって、事故が起こる。
ここまでが早くて、「冒頭」です。

実際この事故は衝撃で、近親者に犠牲者がいないわたしでも、
何日も何日も胸苦しさが続いたものでした。
年月が経ってもナマナマしく、思い出すと頭痛がする大惨事です。

それを映画の冒頭にもってきて、話はぽーんと過去にとびます。

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シーンは大きな航空会社の労働運動です。
会社に待遇改善を要求する社員と、会社と対立するのをおそれて要領よく逃げる社員。
その対比が描かれます。

労働運動にもドラマがあるでしょう。
そこにはヒーローもアンチもいるでしょう。

でも冒頭で人が死んでるんです。
おおぜいです。
体育館いっぱいの柩ですよ。子どももです。
みんな肉片になっちゃったんですよ。

それが頭に残っているのに、待遇改善がどうのと言われても、
感情移入できません。
もちろん、労働環境が事故につながったと、そういう糸でつながるのでしょうが
その糸はあまりに細すぎて見えません(結局つながらずにラストを迎えます)。

映画『桜田門外ノ変』もそうでしたが、冒頭に衝撃シーンを持って来て
そこから時間軸を戻すと、感情が置いてけぼりを食うのです。
もし『タイタニック』が沈没シーンから始まったら、そりゃあもう、
どこでなにを感じたらいいかわかりません。

衝撃シーンから過去へ。
この手法で効果があるのはミステリーだと思います。

『沈まぬ太陽』での過去の描写はあくまでも、一会社の社内的戦争に見えます。
「仲間のために戦う」っつったって、会社の仲間です。ちいさすぎます。
もちろんおおきいちいさいで映画は語れません。
武士がお家のために戦ってもドラマになりますが、
わたしたち観客は冒頭で大事故を見せられているんです。

時間軸に沿って描いたら、印象が違っていたでしょう。
骨太の社会派映画として楽しめたでしょう。

この映画が描くところのヒーロー恩地(渡辺謙)は、
仲間のためにと戦い、上層部に疎まれ、海外派遣となります。
テヘランとかナイロビとか転々とします。
それがまるで悲劇のように描かれますが、どうでしょう?

悲劇は御巣鷹山の事故です。
左遷なんて、それに比べればあまりに小さすぎます。
見せる順番のせいで、そう見えてしまうのです。

わたしの兄は、入社してすぐに某国へ赴任になりました。
左遷ではありません。
外交で揺れ、一触即発な地域で、全く連絡がとれません。
数年後、帰国が決まって、「生きてた」とほっとしました。
父が空港に迎えにいったところ、兄は服装も人相もすっかり変貌し、
誰だかわからなかったそうです。
頭にターバン巻いて、顔中ひげだらけ、肌が真っ黒だったそうです。

恩地の赴任先は映画で見る限り「これが左遷?」と、苦難に見えません。
家族と共に赴任してもいいし、単身でもいい。
選ぶことができ、それくらい治安の良い場所なんです。
給料だってちゃんと支払われ、明日の食料にも困らない。
休日にはキリンを眺めたり、象を撃ったりしています(悪趣味ですね)。

それを悲劇と言うなら、よほどめぐまれた環境の人たちです。

もちろん仕事に信念があり、それを通せないジレンマはわかります。
会社員ならみなあることで、フリーのわたしも同じ苦痛を味わっています。

恩地の不遇の一方で、時間軸を揺らしながら、御巣鷹山の遺族の様子が入ります。
こちらのほうがどう見ても悲劇だし、わたしとしては気になります。
それを挟みながら「会社での処遇、出世、仲間意識」を見せられても、
「生きててよかったね」としか言えません。

恩地が遺族のために奮闘するかと思えば、なぜかそういうシーンも少ないです。
恩地の頭の中を組合運動が大きく占めています。
さらに娘の結婚がどうの、という話に至っては…

やはり社員にとってあの事故の悲劇は「会社の信用を失うかどうか」であって、
それ以上のなにものでもない、と思い知らされます。

大企業の内部紛争をドラマにするなら、
実際起こった事故をモチーフに使わなければよかったのに。
モチーフとして不可欠なら、内部紛争と事故の関係を
しっかり太い紐で結んでくれなければ困ります。

きっと原作ではもっと突っ込んでいたのでしょう。
映像化での制約があったのかもしれません。
事実を基にしたフィクションの限界点なのでしょう。

中途半端なものを見せられ、消化不良になりました。

しかしこれはわたし個人の感想で、この映画は一般でも業界でも評価が高く
日本アカデミー賞作品賞をとっています。
企業批判につながる映像化困難な小説をきちんと映画化し世に公開した
創り手の方々のなみなみならぬ努力と困難も想像できます。すごいです。
この映画で楽しまれた方も多く、それが多数だと思いますので、
わたしの感覚は「へんくつ」と受け取って、流してくださっていいです。

あの事故が起こったとき、わたしはOLでした。
会社の友人は夏休みをとって、子ども達と実家へ帰っていました。
庭で子どもが言ったそうです。

「飛行機がちょうちょみたい」

見ると、ゆらゆらふわふわと飛行機が揺れていたそうです。
墜落直前の様子を目撃したのです。

国民がみな、この事故の衝撃を忘れられません。
扱いは慎重に願います。

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コメント

私の感性も同じですが?しかし?この映画を見る前に,テレビドラマの不毛地帯を,ところどころ?毎週ではなく見ました!なんか?不毛地帯と同じ作者じゃなかったのかな?私の記憶が違うかもしれないが〜不毛地帯と同じ目線で見ると,今は会社に命を預ける人々は少ないが,家族や親族より会社の地位が大きく取り扱われている,一世代前の社会現象の再現です!事故より会社にスポットライトを当てる為に日航機事故を話題の一環に取り扱っているところは?私はもっと遺族だとか〜事故にあった家族にスポットが当たるのかと期待したが?ちょっと期待はずれだったが〜これも映画でも!監督の意識と私が思っていた意識には大きな隔たりはあるが〜これも映画です!4時間は?ちょっと期待はずれでした!お金出しては見ないと思う!

追伸〜象を仕留めるシ-ンは必要なのかな?大きな会社への恨みとか?憎しみとか?なんで〜?一番弱い動物に憎悪を向ける事が必要なんだろう?意味がさっぱり分からない?まぁ〜大作なんだろうが?

michiさん
象をしとめるシーンは巨悪(巨大な会社組織)と戦うイメージだと思うのですが、
象は大きいけど悪ではないし、襲って来たわけでもないし、ああもう、
命をなんとも思っていない手前勝手な行動ですよね。ぞっとします。
主人公の意識は半径5メートル内の正義。
不毛地帯も同じ原作者(作家)ですが、脚本家が違います。
わたしはドラマを見ていません。映画もあるみたいですが、未見です。
今回は4時間かけて「ある会社のハナシ」を見せられたわけですが、
時代的なズレはもちろん、事実をモトにする難しさを感じました。

「日本航空123便墜落事故」を軸にし人間模様を描いたものだと思って見ましたが
ちょっと違っていましたね!こういうテーマを、商業映画として成り立たせるのは
色々と柵があって難しいのでしょうか?大企業(国営?)、労働組合、大きな事故という、
別個にしても重いテーマを、組み合わせてひとつの映画にするのは、無理だった?
皆が忘れかけていたことを、思い出させてくれたたのが救いですね。

まあくんへ
予想と違って、会社組織の内情でしたね。
労働運動から始まって、それが事故につながって、
ヒーローが遺族のために奔走し、会社の体質改善をする、
という話なら飲み込めますが、暗部ばかりが目立ってしまい、嫌な気持ちになりました。
全体に散漫でしたが、時間軸をいじらなければ、感動作になったのではと思います。
映画より連ドラのほうが緻密に描けたんじゃないかなとも思います。
スポンサーが逃げそうですけど。

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