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2011年5月16日 (月)

黄土色の夢

半世紀生きて来て、一度も髪を染めたことがないけど、
染めようかなと思ったことが無いわけではありません。

二十代後半、ふと「髪を染めてみようかな」と思いました。
子育てと介護で手一杯で、髪を振り乱して生活していたので、
ちょっとだけ気分転換してみたかったんです。

結局、ふと思っただけで、実行しませんでした。
忙しい時は染める時間もないですからね。
その時染めたかった色は「黄土色」です。
なぜ黄土色かというと、栗色だと天然に見えてしまうし、
染めるなら「染めた!」とわかるようにしたかったんです。

もはや二十代後半の頃ほど髪に興味がなくなって、
今は放置状態ですが、今日は久しぶりに黄土色にしたかった過去を
思い出しました。

理想にぴったりの黄土色の髪を見かけたのです。
電車の中でです。

その人は、若い男性で、学生のように見えます。
つんつん立つくらい短い髪を黄土色に染めており、それは茶トラの猫の毛並みに似ています。
彼は出入り口ふきんに立っており、友人としゃべっていました。
友人は座っているので、黄土色の彼は下を見ながら話しています。
よほど楽しいことがあるのか、笑顔で話が尽きないようです。
友人が座っているのは座席ではありません。
車椅子に座っています。髪は黒で、顔は見えません。

 
もうじき次の駅が見える。というところで、怒鳴り声が聞こえました。

「出入り口になんだ。邪魔だ、どけ!」高齢の男性の声です。

すると黄土色の人は言いました。「あ、次、降りるんで」

言い切らないうちに電車は停車し、ドアが開くと、
ホームでは駅員さんがスロープを持って待ち構えていました。
この私鉄沿線では車椅子を利用している人が乗車すると、必ず降りる駅でこうして
駅員さんが待っています。
どの車両のどのドアで降りるか、乗った駅から連絡が行くらしいです。

スロープが設置され、黄土色の彼と黒髪の友人は降りてゆきました。
そのあとから白髪の老婦人がよたよたと降りてゆきました。

ドアが締まり、電車は走り始めます。
わたしは胸がぞわぞわしました。

大勢の前で「邪魔だ!」と怒鳴るなんて、なんて心ないジイさんでしょう。
ジイさんの顔は見えませんが、声でジイさんとわかります。
降りなかったので、まだ乗っているはずです。
叱りつけた若者達は降りるところだった。というタイミングで、
きっと怒鳴ったジイさん、バツの悪い思いをしたでしょう。
それにしても車椅子を利用している人に向かって「邪魔だ」などと、
非常識極まりないジイさんです。

そこまで考えて、わたしの胸はぞわぞわからもやもやに変化しました。
後から降りた足の悪そうな老婦人のことを思ったんです。
きっとジイさんは、その老婦人が降りにくそうなので、つい、
「若者が邪魔な場所を占領しおって」と口を出したのでしょう。

そこには車椅子がどうとか、全く関係なくて、
「ふたりの若者めが」という思考だったのでしょう。

人には都合があります。
降りる時に時間をかけないよう、彼らは正しく出入り口にいたのであって、
人の邪魔をしたわけではありません。
怒鳴られる筋合いは全くないのですが、でも、怒鳴った方も勘違いです。
老婦人の足元を気遣っての「怒鳴り」です。
しかも、車椅子がどうのととんちゃくしない態度です。

それはそれで、健全で、あっていいことではないか。
ぞわぞわしてしまった自分こそが、特別な目で見ていたんじゃないか。
そう気付いたんです。

黄土色の彼の「あ、次、降りるんで」は
当惑も怒りもなーんもない、やわらかな反応でした。
黒髪の友人も怒鳴られたことなどすぐに忘れてしまうでしょう。

ぞわぞわからもやもやになってラストすっきりしました。
うまく言えないのですが、日本って健全なんじゃないか。
自分のレベルが低いだけで、いい感じで世の中はできているんじゃないか。
そんなふうに思えたんです。

帰宅してその話をすると夫は言いました。

「そんな場面で怒鳴っちゃいかん。いやだなそういうの。よくないよ」

よくない? またまた混乱しました。

相手の都合を考えず、迷わずに怒る。
それはわたしが人間の七不思議くらいに思う、苦手な行動なのだけど、
なんだか今日のジイさんは、根底に「単純な善意」があるようで、
人として、自分よりイイカンジな気がしてしまいました。
でもまあ、怒鳴っちゃいかんのでしょう。

ともあれ、黄土色はやめようと思いました。
若い人の頭には似合いますが、わたしには似合いそうにありません。
一生染めないではなんだか寂しいし、
今後、染めるとしたら何色がいいかなと考えてみます。

頭が柔らかくなりそうな色。
先入観とか偽善がない、まっさらな色。

って、白?

ならばほっておけば何年後かにはなれるでしょう。
なにかもっとぱっとした色、ないかなぁ。

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コメント

今日の朝、駅の階段を登っていたら、目の前の若いお嬢さんのスカートの
お尻の部分に、黄土色の染みがついていたので「これはマズイ!!」と思って
「あの、スカートに泥のようなものがついていますよ」と声をかけたところ、
「これはぁ~、泥じゃなくて、ガムがくっついて取れないんですッ」と逆切れされました。
即座に「すいませんでした」と謝りました。
知ってて着てるらしい。そういうものなのでしょうか。ウンコじゃなくてよかったけど…。
ちょっと心が折れそうになった出来事でした。
もしかしたらJUNKOさんが遭遇したジイさんも心折れそうだったかも。。。
でも、今後も負けずにおせっかいしてほしいですね。

みったさん
笑った!
その若いお嬢さん、青いですね。
「きゃあ、もらしちゃったわ」とか言って
「教えてくださってありがとう」とお辞儀をしながらトイレに駆け込む…
くらいのノリがないといけません。
みったさんのせっかくの好意を無にしてはいけません。
今後もおせっかいは続けてください。
わたしはエスカレーターで他人から背中のちょうちょ結びを直されたり
バス停で知らないおばあさんにセーターの毛玉をとられたりして
あせりつつも、おせっかいを有難くちょうだいしています。
わたしもこんどおせっかいをしてみます。

junkoさんの髪の毛はピンクが良いんじゃないのかな?そんな髪そめ無いか?
ところで,電車の中で大声出す人って勇気あるね〜
我々田舎の人々は必死に降りる場所の確認が必死でそんなどころでないのに?

みったんさん〜やはり都会だな〜スカ-トにガムが,こびりついているのに,平気ではく人って居るんだ_?

michiさん
ピンクいいですね。
髪染めのプロセスわかりませんが、
すっかり白髪になったあとだと、ピンクに染まりやすい気がします。
電車の中で大声出す人はわりといます。
昨日も帰りの電車で、歌いながら「やっぱ高倉健だよ」と叫んでいる
おじさんがいました。暴力はふるいませんが一瞬怖いです。

ガム付けたままって人はわたしもまだ見たことありません…。

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