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2011年5月 9日 (月)

続ける話 〜鈴木さんのゲゲゲ〜

日本映画でひさしぶりに「見て良かった」と思えるものに出会いました。

ゲゲゲの女房

鈴木卓爾監督。脚本も鈴木さん。
鈴木さんはわたしが大好きな映画『ひみつの花園』の脚本も書いてます。
たしか矢口監督と共同脚本だったと思います。
鈴木さんが監督!ってことで、DVDを借りてみました。

『ゲゲゲの女房』は朝の連続テレビ小説が話題になっていました。
わたしは朝ドラのほうは、見たり見なかったりで、集中できませんでした。
創作に打ち込んでいると、決まった時間に毎日テレビをつけるなんて無理で、
朝ドラは見ることができないんです。

夫は見ていたようです。
夫は「勉強だ」と言いながら、様々なドラマを見ています。
いつかわたしが書くことになったら、手助けになると思ってくれているのです。

「この先JUNKOさんが朝ドラを書く日がきたら、ぼくは会社をやめる覚悟だ」

これ、永久保存版の名言です。
会社に勤めてないくせに、やめる気ですってサ。
ありがたくて涙が出るほど笑っちゃいましたよ。

まあそれに、わたしが朝ドラを書く日は来ませんね。
全く想像できません。
わたしが皇太子妃になるくらい、ありえません。

皇太子が最愛の雅子妃と別れて、わたしを見初めて、再婚。
その前にわたしも鼻毛の白い夫と別れなくてはだし、
そんなまわりくどい展開、ありえません。

さて鈴木監督の『ゲゲゲの女房』ですが、

まず、キャスティングに成功しています。
クドカンの水木しげる。
吹石一恵の女房。
すごくいいです。

脚本は思い切った構成です。
冒頭、見合いの話があって、すぐに結婚式。
実際に見合いの5日後に結婚したらしい。
電撃結婚!などという甘い話ではなく、「片付いた」という流れです。
ここをササッとトバします。
トバすので、本人(女房)の当惑が実感できる仕掛けです。

コンナハズジャナカッタ!という幻滅と、
カエルミチハナイ!という絶望と。

思い切った構成なのは、ここだけじゃありません。
この話の90%が「静かなる不安と怒り」なのです。
吹石さんの仏頂面をかなり長い時間眺めることになります。

観客は「もう少し生活に喜びを見い出してくれないものか」と願いながら
彼女の人生につき合わねばなりません。
わたしが脚本を書くなら、途中で何カ所かある、あたたかいエピソードを、
もう少しわかりやすく膨らませて、おおげさなカタルシスにして、
そのあとにガッカリさせて、メリハリを付け、観る人にサービスしてしまいます。
この映画はそのサービスを最小限に抑制しています。
雑に見ると「皆無」に見えるほどです。
鈴木さん、腹くくってる。すごいです。尊敬します。

黒いバナナ、黄色いバナナ。
かすかな光を頼りに「女房を続ける話」です。

そう、これは「続ける話」です。
水木しげるは妖怪漫画を書き続け、
女房は女房を続けた。それだけで今がある。って話です。
時計のネジを巻くシーンがそれを象徴しています。

「貧乏は全然平気です。命まで取られませんから」
このセリフ2度出てくるんです。水木しげるの言葉です。

お金が無く、未来も見えない生活の中(去年のうちみたい)、
いきなり講談社の編集者が現れ、救いの手を伸ばします(今年のうちみたい)。
けど、水木しげるはその手を振り払います。

苦手なことはやらない。その考えを曲げません(すげぇ)。
妖怪と心中する覚悟です。

神さま(講談社)は再度来て、「自由に書いてください」とあいなります。

それまでの貸本業の十倍のお金をもらう生活が始まります。
(十倍でもひとなみ以下かも)

女房「こんなにもらっていいのかな」
ゲゲゲ「くれるんならもらっとけ。今までが人間のもらう原稿料じゃなかったんだから」

それまで雑草を食べていたふたりは自転車に相乗りして
「贅沢してチキンカレーを買おう」と笑い合います。
あこがれの中村屋のチキンカレーです。

涙出た。
90%仏頂面とつき合って来て、最後に救われた。
この映画、途中放棄せずに「最後まで見続ける」べし。

映画を見慣れてない人には「あれ?」と、
ちょっとわかりにくい暗喩的表現などありますが、
そこにひっかからずに、とにかく見続けて、
なにか感じられたら◯だし、合わなかったら×です。
合う合わないはある映画だと思います。
わたしは◎でした。
2度見るとぐっと良くて、3度4度と見たくなります。

いい映画です。

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