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2011年11月 8日 (火)

せるほの謎

きのう、ドラマの打ち合わせの前のことです。

いつも30分前には局最寄りの駅に着き、駅ビルのパウダールームで予習をします。
そこには大きめのデスクと照明があり、原稿を読み直すことができます。

「こことここは伝えよう。ここはわからないと正直に言おう」

伝えるポイントをおさらいします。

打ち合わせはなごやかで楽しく、あらそいごとなど皆無です。
それでもわたしは書き手として真剣勝負をしています。
新人ですからね。

お忙しい相手の時間を割いて話し合いがもたれるのです。
言い漏れ、聞き漏れがないよう、
会う前に気合いを入れ直すというわけです。

さてパウダールームに着きました。
座ったとたん、人から質問をされました。

「今日は月曜ですか、火曜ですか」

推定65歳の銀髪の婦人です。
ブルジョアジー…という感じの派手な帽子、
太いアイライン、荷物はどっさり持っています。

「月曜日です」と答えると、彼女は隣に座り、話し始めます。

「日本は変ね。みんなせるほを持っている。
せるほばっかり見ているから、頭がばかになるんだわ」

せるほって何でしょう?

「アメリカの記者クラブではね、半分も持ってないわよ。
ばかになっちゃうからね、持たないの。せるほなんてね」

話が止まりません。
予習ができません。
でもわたしに話しかけているのだから、
なにか答えなくてはいけません。

「せるほってなんですか?」

「携帯電話」

あーそーゆーこと!
セルフォンですね。

「アメリカではね、日本人のこと、猿がバナナを持っている、
って、笑ってますのよ。おほほ」

あーそーですか。
わたしは続きを聞きたくないので、トイレに行くふりをして
席を立ちました。
すると婦人はまだしゃべります。

「天気予報と曜日はね、困ったら聞けばいいのよ」

つまり、セルフォンを持っている人に聞くのだそうです。

理論矛盾を感じながらトイレに入り、出て行こうとすると、
婦人は言いました。

「ありがとう」

たぶん、話を聞いてくれてありがとうなのでしょう。
礼儀正しい婦人です。
挨拶をして別れました。

以前、バス待ちをしているときに、オロナミンCを持った老婦人に
話かけられました。
オロナミンCの効用をひとしきり教えてくれたのち、
バスが来ると、わたしに深々とお辞儀をし

「話を聞いてくれてありがとう。行ってらっしゃい」と言いました。

彼女はバスに乗りませんでした。
わたしと話すために、一緒にバス待ちをしたのです。

不思議なのですが、
よく通りすがりの方から話しかけられます。

電車の中で「降りる駅までしゃべってていいですか」と
言われたこともあります。

昨日、予習をできないまま打ち合わせとなりましたが、
まあこういうことも、ありでしょう。
おもしろい人間と出会い、得した気分です。
「日本人を猿と称した日本人」として
にくめないおばさん像ができかかっています。
いつかドラマか小説に登場していただきましょう。

明日は出版社で打ち合わせです。
出版社の場合はトイレで予習はしません。
小学一年生なので、宿題をこなすのが精一杯というところです。

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コメント

矛盾しているけれど、間違ってはいない?
道具は使う人次第だから。
観察眼の鋭いJUNKOさんに、素材が自ら寄って
来るのだから、書かないわけにはいかないかっ。
物語を引き立てる、素敵なキャラクターが登場する
ドラマ・小説を楽しみにしています。
自分に負けずに頑張って下さい。

まあくん
自分に負けないようがんばる。
日々、気合いを入れ直し、なんとか生きてます。

よく話しかけられるのは、ひまじんオーラが
出ているんじゃないかなあって思います。
のろのろ、ぼやぼや、してるんで。

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