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2012年6月13日 (水)

叙述トリック

昨日、打ち合わせに行くために自宅前のバス停に立っていたら
次に並んだ女性から話しかけられました。
「バス来ますか?」

わたしは即答します。「3分後に来ます」

今は便利になっていて、携帯電話でバスの運行状況がリアルにわかります。
時刻表はあてになりませんが、携帯で「あと何分で来る」と正しくわかるのです。
おかげさまで、バス待ちで20分なんてことはなくなりました。
バスが来る時間を見越して、バス停に立てばよいのです。

女性は「よかった」と笑顔で言い、そのあともずっと話し続けます。
「白内障でね、手術をして、病院行くのよ…先生はね、どこそこのなんたらかんたら」

年齢は65歳とみました。
大きなマスクで顔は見えません。
「病院はいやよね、だいっきらい。でもバスですぐだから助かるわ」
話は終わりません。

わたしは聞き手としてこの人に必要とされているのだと感じます。
少なくともこの3分間、わたしはたいへん役に立っているのです。
世の中の、とまではいきませんが、この人の役には立ってます。
ほこらしい気持ちで「へえ」とか「はあ」と、せっせと相槌を打ちました。

ところが女性は言いました。
「今日眼帯とれるから、そしたら見えるらしいわ」

え?
女性はマスクをしていますが、眼帯はしていませんよ。

「手術はどなたがしたんですか?」
「だんなよ」

ああ、そうなんだ。
主語を間違えて聞いていました。
だって主語抜きで話すんだもの!

主語を入れ替えて最初から話をなぞると、世界が変わって見えます。
こういうの、ミステリ界では叙述トリックというのでしょうか。

バスが来ました。
3分間、彼女の叙述トリックを楽しんだことになります。
携帯で運行状況がわからなければ、20分バス待ちをして
20分叙述トリックを楽しめたのかもしれません。
便利で何かを失ってるのかもしれません。

そもそも。
時間を調べることで、無駄をなくしている気になっていましたが
時間を調べることに、時間を費やしています。うーむ。

昨日は出版社で一冊見本をいただきましたが、本日は自宅に見本が届きました。
紙から生まれた百瀬太郎。おぎゃ〜。

Toumei_1

ポップです。やさしいピンク。

Toumei_2


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コメント

いなもとくん、誇らしげですね。猫的やる気オーラを感じます。
『猫弁と透明人間』いよいよ明日発売、秒読みしています。
・・・実母が、叙述トリックの名手です。名手すぎて迷宮入りもしばしばです。

おのださま
ほんとだぁ…
いなもとのやる気に、今、気付きました。
おかあさまが叙述トリックの名手ですか。
聞く側が頭フル回転させないといけませんよね。
実は実は…わたしも叙述トリックの名手で…
夫がいつも「主語不明」と言います。
日々是迷宮です。

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