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2013年8月26日 (月)

父と母とわたしの名前

春頃から忙しくなりました。

一時、体調を崩したりもして、
そのあと遅れを取り戻そうとさらにばたばたして、
実家へ顔を出す機会を逸していました。
 
急に思い立って、もう日が暮れてたんですけど、両親の顔を見に行きました。
父はひとまわり小さくなって、母は機関銃のようにしゃべります。
わたしを待っていたみたい。
 
母が言うには、市に申請して、要介護認定を受けるのだそうです。
すでに職員さんが家に来てくれて、家の構造やら体調やらを細かく調査したらしい。
わたしは両親がそんな状態だと気付きませんでした。
 
母は言います。
「職員さんにね、娘さんはときどき顔を見せますかと聞かれたの」

それはそうですよ。

市内にいるのですから、娘が立ち会っても良さそうなものです。
 
「わたしね、言ってやったの。
 娘は作家デビューして、本を書くのに忙しいんだって」
 
え? 質問の答えになってないじゃないですか。
 
「そしたら職員さん、急に黙っちゃったのよ。
 だからね、念を押したの。あなた猫弁を知らないの?って」
 
介護認定の項目に「妄想を話す」があったら◯を付けられたかも。
 
「ねこべん、って何度も念を押しておいたわ」
 
母は勝ち誇ったように言います。
その横で父は、わたしが持参した小説すばるの表紙を眺めながら
「大山淳子って俺が付けた名前だもんな」と言いました。
 
帰り道、大雨の中、傘をさして歩きながら
数年前を思い出しました。
 
わたしは某映画のオリジナルプロット(ストーリー)を依頼され、
企画会議に何度も足を運びました。
プロットは採用され、製作がスタート。ここまで半年かかりました。
わたしの名前はクレジットされず、プロット代は5万円でした。
 
試写会に招待されて仕上がりを見たら、思い描いたものと違っていました。
クレジットは気にならなかったのに、内容には強いショックを受けました。
 
自分が良いと思う世界を人に届けるためには、
名前が出る立場に立たねばならないと痛感しました。
 
全国公開後、両親は新聞広告の映画タイトルの下に
「原作 大山淳子」と印字した紙を貼り付けてコピーし、
新聞広告をねつ造して、わたしにくれました。
両親の気持ちをくんで「ありがとう」と受け取りましたが、
顔がこわばり、笑えませんでした。
 
帰り道、心に誓いました。
自分の思いをきちんと形にしよう!
 
今もその一心で書いてます。
名前を出すのは目的ではありませんが、
父や母がねつ造しなくて済むことに、今はとても安堵しています。

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コメント

今日は~~もうすぐ 猫弁 4部の、発売の、日がきますね。  楽しみに待ちました。
 ものを、無から、有に、作り出す事は、大変なんですね。   大山さんが自分の思いを、形に、しょうと、思う
 気持ちって、ーーーー。大事な事なんですね。  作り手の、基本でしょうか。
 人を、感動させるって、難しい事なのでしょう。    最近猫の表情、行動を、見ていると、繊細なところ、が、神経質
 に、見えるけど、人間を、観察している事が、良く見えてきました。  自分のブログに時々 登場させて、いるのです 猫ちゃんにも、ちゃんと 小さいけれど ドラマがあります。  いつか、猫の気持ちを、書いてみたいものです。 笑
 我家の、猫ちゃん  3匹 兄弟 19歳  元気に  人間様を、頼りにして?しながらどーも、こき使っているようで
 す。使われて、癒されてる私、不思議な関係ですね。

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