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2016年11月25日 (金)

ピコピコ、えーと。

ゲラチェックをしています。再校ゲラです。

校閲ガール(かボーイ)がしっかり支えてくださっているので
安心してがんばれます。
再校はわたしが赤を入れられるラストチャンス。
指摘されたところだけでなく、すべてを読み直して
丁寧に文章を仕上げます。
 
来年1月18日刊行予定の『原之内菊子の憂鬱なインタビュー』です。
ゲラを読みながら気分が上がってきます。
「読んで楽しい本」だと太鼓判を押しちゃいます。
著者の太鼓判の信ぴょう性はいかに?
 
このゲラを仕上げたら『分解日記』第二章に戻ります。
 
Gera1125

週に一度、孫の紅茶は「かーか」と一緒にわがやへ来ます。

その日はご飯を食べさせたり、遊んだり、
「ばーば」として過ごします。
いそがしくても死守したい、わたしにとり貴重な1日です。
 
先日紅茶はわがやの電話機を見て指をさしました。
ライトがピコピコ光っています。
「留守電にメッセージがあります」のお知らせライトです。
 
ずいぶん前にもらったメッセージなのです。
用件も聞き終わっています。
でも消去できずに、ピコピコのままなんです。
 
紅茶はライトが気になって気になって、落ち着きません。
わたしは再生ボタンを押しました。
「淳子か、えーと、T男だけど」父の声が流れます。
わたしが誕生日にプレゼントしたシャツが柄もサイズもぴったりだったらしく
「うれしかった。ありがとう」という言葉が続きます。
 
父は存命ですし、いつでも声を聞けるのですが、
このなんてことのない感謝の言葉がうれしくて、消せないんです。
三年ほど前に倒れた時、しばらく立てず歩けず言葉も出ませんでした。
留守電を聞くたびに「元気になってくれてありがとう」と思えるのです。 
 
紅茶は2歳でまだ話の意味はわかりません。
でも「えーと」が楽しかったみたいで、口真似します。
「エートー、エートー、エートー」
あと一回、あと一回と再生をねだります。
紅茶のアンコールに応えて十回は聞いたかしら。
 
わたしは父の声を聞きながら思ったんです。
このありきたりな言葉が、こんなにも元気をくれる。
今、命を削るような思いで書いている小説にどんな意味があるのだろう、と。
 
読者の方々もそれぞれの生活の中で、
心ふるえる出来事があるでしょう。
それを超えるものを提供するのは無理かもしれないと思うんです。
 
でも、わたし、書き続けたいんです。
日常の心ふるえる出来事と同じくらいの感動を
提供できたらいいな。
 
Ina1124_2
 
紅茶が帰ると紅茶の椅子にいなもとが座ります。
「俺の」と言いたげです。

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コメント

幼稚園の頃、父の上司の方にご馳走になった事があり、デザートにメロンが出たのですが、初めてのそのメロンの味にかなう味が今もありません、たぶん、それ以上の味でも思い出の味にはとどかないのだと思います。「雪猫」のタマオへ心震えたことは他のどんな猫の本を読んでもとどかない気がします。音楽でもありますが、五感が心に刺さる時はずっと心に残り続けると思います。

いなもと、凛々しい。。。

何が何をどう超えるのかはわからないけれど、
JUNKOさんの作品が私(と娘)に与えてくれる何かは、
唯一無二のものです。
そして心震えなかったことは一度もありません。

わたしはいつも大山先生の言葉に心が震えています。読むだけで涙がでます。特に『猫弁と指輪物語』の256、257ページが大好きなんです。「あなたには人を幸せにする才能がある。」ふと立ち止まってみたくなる時、いつもこのページを開きます。わたしもそんな才能の持ち主になりたいと思います。次に出る本も、その次に出る本も必ず読みます!楽しみに待っています。

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